『初ブルネットとのあれこれ 第1話』はコチラ
『初ブルネットとのあれこれ 第3話』はコチラ
自分から時間をくれと言っておいたのに、まさかのOKに一瞬驚きました。「ありがとう。駅についたら連絡するね。また後でね。」と言って電話を切りました。約束の時間までまだある。僕は彼女とのお店での会話を思い出しながらシャワーを浴び、出かける支度をしました。(花が好きって言ってたな。お酒はあまり飲まないけど白ワインは好きって言ってたよな。)
そして早めに家を出るとお花屋さんへ向かったのです。お花屋さん…。過去に行った記憶がありません。ただ女性にプレゼントするなら薔薇かなぁというのは何となくありました。店員さんに薔薇はあるか尋ねました。するとすぐに用意できるのは10本も無いとのこと。(なるほど…女性にプレゼントするには前もって予約しておいた方が良いのだな…。)頭の中で10本に満たない薔薇をAに渡すところを想像しました。(それなら1本の方がカッコいいのではないか？それに花を持って彼女を待っているのはしたことがないだけに恥ずかしい気もするぞ。)ということで1本の薔薇を買いました。店員さんがラッピングをしてくれたおかげで、たった1本のバラの花が豪華に見えました。続いてお花屋さん近くの酒屋さんへ行き2,000円程の白ワインを用意し、待ち合わせ場所へと向かいました。
当時の僕は今と違って年の割(20代)にお金があったため某ドイツメーカーの新車納車待ちという状況で、その間にディーラーにお借りしていた旧型の代車に乗っていました。Aとの待ち合わせの駅は僕は初めて行くところで土地勘が無く、代車を傷つけたくないとの思いもありコインパーキング以外の駐車場を探しまくったあげく、駅から少し離れたショッピングモールの有料駐車場へ止めました。そこから駅へ歩いている途中、(本当に彼女は来てくれるのだろうか？)とはじめて不安になりました。なんだかんだで約束の時間ギリギリに待ち合わせ場所へと着きましたが、Aの姿は見当たりません。とりあえず着いたことをショートメールで送りました。10分経って返事が来なかったら電話しようと思いました。1時間は待つつもりではいました。
駅を行き交う人達に視線を向けていると一際スタイルの良い女性がいました。それは遠くからでもAだと分かりました。彼女もこちらに気づいたようで恥ずかしそうな笑顔を浮かべて歩いてきます。レザーのライダース風ブルゾンにタイトジーンズ。ロングのブルネットヘアはポニーテールで括られています。お店で見せたドレス姿のゴージャスなAとは異なる雰囲気の普段着姿にも魅了されてしまいました。「Gomennasai. Machimashita ka ? 」「全然大丈夫。これ貰ってください。」僕はワインとバラの入った袋を渡しました。袋を覗き込んで笑顔を見せるA。僕もとりあえず喜んでもらえたかなと安心しました。「Sukoshi coffee demo nomimasuka ? 」来てくれただけでも嬉しいし、プレゼントを渡したら帰ると思っていたので予定外のお誘いに少し戸惑いつつももちろんOKしました。
駅近くのファミレスに入っていろんな話をしました。時間にして1時間だったか2時間だったか覚えていません。もっと一緒にいたいという気持ちは抑え、少しでも時間を作ってくれたことへの感謝とあまり遅くなっては申し訳ない気持ちから「そろそろ行こうか。」と僕から言いました。Aは待ち合わせた駅が最寄り駅で徒歩10分位のところに住んでいるとのこと。車をとめたショッピングモールとは逆方向でしたので歩いて送って行くことにしました。途中、公園に咲いた花の香りを嗅ぐAを見て(本当に花が好きなんだなぁ…。今度は沢山プレゼントしよう。)と心に決めたのでした。住宅街を進み「Koko desu watashi sunderu.」と彼女が立ち止まった先にあったのは3階建の古びたアパート。エレベーターもありません。見た目とのギャップに正直驚きました。勝手なイメージで派手な生活をしていると思っていたので…。「Kyo wa arigato. Ouchi tuitara renraku kudasai. 」そう言うと彼女は階段を上っていきました。部屋の前で手を振る彼女。部屋へ入るのを見届けると、僕も駐車場へと向かいました。
がしかし…。来た道を帰ったつもりなのに住宅街で迷い、駅へ着いたのが30分後…。更にはショッピングモールの明かりも暗く嫌な予感が…。駐車場の入り口にシャッターが…。営業時間がとっくに過ぎてしまっていたんですね。自車なら仕方無く次の日にでもと思うのでしょうが、借り物ですので。入り口そばの管理室でお願いをして無理矢理開けていただき脱出成功。最後の最後にいらないオチがついてしまったのでした…。
「全てが思うほどうまくはいかないみたいだ」夜空ノムコウ
続く…
